読んだ本の記憶はきわめて曖昧なものです。そのときの深さを人はどうやって保持しうるのでしょう。このことに対する過信があったから、わたしはカメラを持たずに旅行したり、直観で行動をしてりして、今があるというわけです。
 心底突き詰めて書いた文章は、本人の意図とは無関係に、きわめてエロティックで、そして、きわめて心をつくものです。

 パンと葡萄酒。どちらもものすごく小さいものからものすごく大きくなるもので、目に見えない世界が充溢してはじめて目に見える世界が輝くことをあらわしています。

 なんとなく、その根源を知らずに続いて来た儀礼にはそのような働きがあるようです。