出会っていると思っていたのは錯覚にすぎず、出会いのような顔をした岩石だった。
 上眼目線の世の中が嫌になり、しかし、下眼目線の私は、人の悪意を引っ張り出す原動力となってしまう。
 
 力の威力は偉大でこの威力を知っていながら、これを無視するのは超自然的な事柄である。

 それは、たとえば、異性を意識するとかそうしたことも含まれる。

 生きるのが嫌になって、力の巣窟のようなアカデミズムのなかで、息も絶え絶えのうちに出会った人々。


 なぜ、私のなかのなにかを見てくれるのだろうかと考える。

 死の香が死へと直接的に向かうのではなく、死の香が生を振りまいてゆく不思議。

 そのことなのだろうか。

 縁。

 ふち。

 ふちにすぎないのだから、すぐさま消えってゆくものであり、消え去ってゆくものを消え去ってゆくものとして見つめる勇気。

 詩。

 一見善良そうに見える市民も、上眼目線の塊とも言える。そうであるならば、あたうかぎりの力を手にして、そうしてふっと力から距離をとる、その生き方が、芦には必要なのかもしれない。