[授業]

 いくら美術系とはいえ、高校生にペトロ・コスタは厳しかったようだ。ドキュメタンリーを観ているだけに、作家の「自分好き」が目についてしまったらしい。しかし、コスタは、感情を映像にするだけでなく、言葉にするのが上手い。倫理は、学者に語らせるよりも、芸術家に語らせるほうが遥かに深さの次元を提示できる。それは、芸術家が学者に比べて、はるかに孤独であることと無関係ではあるまい。集団に飛び込みこもうとする心性、あるいは、マイノリティが肩を寄せ合って世界に背を向ける心性、どちらも、生のリアリティを剥奪していってしまう。
 社会の直中にいて、被傷性にひらかれてあること、マゾヒズムと似てあって、絶対的に異なる必然性への同意。瞬間、瞬間、Yesと応答してゆくこと。